大豆100粒運動実践報告会 [2011年2月5日 於:tvk会議室(横浜市)]

【報告1】相模原市立中野小学校PTA会長・山崎儀昭さん(建設業)

そもそも、今年度、中野小で大豆に取り組むことになったきっかけは、2年生だった去年生活科で津久井在来大豆を校内で育て、きな粉にして食べたことでした。子どもたちは津久井在来大豆についてよく知り、愛着を持っていましたので、3年生になって総合的な学習の時間で「津久井のことを知ろう」をテーマにするということで、「もう一度大豆を育てたい」「きなこ以外にも作ってみたい」という気持ちを強く持っていました。 そこで、地元で津久井在来大豆の復興活動を行っている農業者の石井好一さんに担任の西野先生が連絡を取って相談し、「畑で育てれば大きな収穫を見込める。場所さえあれば応援する」という心強い言葉をもらい、土地探しにかかりました。

写真西野先生は今年初めて中野小学校に赴任してきましたので、地域の状況もよくわかりません。そこで、PTA会長である私も協力することになったわけです。子どもたちが日常的に通って大豆の世話をするとなると、学校から近いことがまず条件になります。教頭先生から出された条件は「学校より5分以内300坪、10日以内で探してほしい」ということでしたが、それが難しい。中野小は山間部の津久井湖の近くにあり、平坦な広い土地も少ない地域にあるのです。学校近隣で300坪の空き地となると、旧市営住宅跡地しかないため、自冶会長に「2日以内の正式回答」ということで無理なお願いをしてみましたが、やはり公有地ですので、正式回答には最短28日掛かるとのことで断念。難航が予想される中、石井さんから私の携帯電話に「頼む」という力強い連絡をいただきました。さらに、学校から徒歩5分の土地を紹介されましたが、救急車両の進入難度、津久井湖の崖の危険性、 水道・仮設トイレ設置、子どもだけで立ち入った際に近隣住民か らの視界が悪い、という悪条件が重なり、私の判断で菓子折を 持ってお断りに行きました。最終的には、徒歩20分ではありま すが、私の自宅の近所の荒れ地をお借りすることになりました。 放置されていた土地なので、快諾して頂き畑から徒歩20秒の宅 地の別地主さんに、水道・水洗仮設トイレの設置、駐車場として 砂利を敷くことをお願いし、二つ返事で承諾してもらいました。

写真畑は、敷地面積430坪(1419m2)、耕作面積280坪(924m2)、学校からは徒歩約20分。直接車両が進入するのが難しい土地です。荒廃地ですので、大豆を栽培できる状態にするまで、いろいろな作業が必要でした。私は建設業を営んでおりますので、いろいろな人脈・機材をフル活用しまして、まず、土 壌サンプルを取って、普段つき合いのある会社に頼み、 通常3日掛かる検査を、ラーメンとチャーハンをおごっ て残業してもらい、1.5日でやってもらいました。土壌に は問題ありませんでしたので、その後重機を使って開墾 し、大きな石などを撤去。石井さんと3年生の担任の先 生に確認してもらい、いよいよ子どもたちが畑に入りま す。10年以上は耕作をしていない土地です。

1回目の授業で子ども達は石を拾いながら、牛糞を撒きました。拾った石は2トンダンプ2台分。牛糞は、地域の酪農家に提供してもらいました。この農家の方とも、日頃から交流があり、学校に牛を連れてきてもらって、牛を間近に見る機会をもったこともあります。その後、JAの協力を得て、トラクターで整地してもらいました。

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写真種まきの日は、雨で決行が危ぶまれましたが、担任の西 野先生が決断して、なんとかまくことができ、「大豆クラブ」の活動が本格的に始動しました。大豆クラブというものを作ると、必ず保護者の方もついてきます。家の学校は校区が広いので、近隣の根小屋小学校・津久井中央小学校の保護者の方もお手伝いに来てくれることもありました。やはり夏の暑い時期に手伝いに来たら、楽しいこともないと、ということで、私は古いものが好きで古い脱穀機とかいろんな道具を集めているんですが、かき 氷機を出してきて、かき氷をふるまったりしました。これをやることによって、大豆クラブのメンバーがどんどん増えていって(笑)畑に通ってきて作業をするためには、トイレや駐車スペースも必要だということで、水道局に頼んでメーターをつけてもらって、水が使えるようにしました。こうやって水鉄砲で遊んで楽しんで、「今度は友だち連れておいで」と声をかけることで、またメンバーが増えていきます。

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写真2学期になって、枝豆を収穫する季節になりました。恥ずかしながら私も、この時点で初めて、枝豆が大豆の「中間地点」 であることを知りました。ここで得意げに説明していますけ ど、子どもたちと接している間に根粒菌というのも初めて知りました。ふたりがかりでやっと抜けるくらい、りっぱに成長しました。

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これは、畑から学校まで帰る道です。子どもたちがこうやって枝豆を捧げ持ってぞろぞろ歩いていると、地域の人たちは「なんだなんだ」ということになります。 近くに、社会科の学習でもお世話になるスーパーがあるのですが、その日は枝豆が売り切れになったそうです(笑)

写真収穫になりました。ちょうど学校行事が11月には集中し てしまいます。畑で大豆がさやからはじけ始めて、近所の 方が「いつ収穫するの」と心配して電話をいただいたりし ました。石井さんが脱穀機の段取りをつけてくださって、 無事収穫することができました。私も大豆初心者ですから、 収穫した大豆を乾燥するということを全く考えていません でした。穫ったその日に広げて乾燥させなければならない ということで、しょうがない、私の家の家財道具を全部出 しまして、シートをひいて、古いものコレクションからこ のような道具を出してきて、毎朝我が子のように攪拌をしました。

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写真最後は先生が来て下さって、きれいに部屋を掃除するところまでやって頂いて。この後、石井さんに乾燥機にかけて頂いて、このようにたくさんの大豆が収穫できました。約180キロです。びっくりしましたね。子どもたちもこんなにたくさんの大豆を見たことがありませんから。子どもたちに何をやりたいかと聞いたら、味噌を造りたいというので、学校の校庭に 釜をおいて味噌造りを始めました。石井さんの「大豆の会」がお手伝いをしてくれました。まだ朝日が昇る前の 時間です。火をおこして、前日から洗って浸水しておい た大豆を煮始めます。担任の先生は始業してしまうと忙しいので、あく取りだけを手伝ってもらいました。 また、子どもたちには、山から拾ってきた枝で、大豆を煮るときの火をおこす体験をしてもらいました。昔、 中野小学校の近くに大きな味噌屋さんがあったんです。 そのときの大きな樽を譲り受けていたので、その樽を(風を避ける)火起こし蔵として使いました。その味噌屋さん の跡地は今こどもたちがよく遊んでいる公園になっていま すので、あの公園にこんな味噌屋さんがあったんだよ、と いう話もしました。樽は、軽自動車くらいの大きさがあり ます。これは撤収しているところです。

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朝から火をつけて午前中いっぱい煮えるまでかかり ます。15分間の休み時間に子どもたちは煮え具合 を見に来ます。煮えた大豆はおいしくて、朝ご飯食 べてないのか、っていうくらい喜んで食べて、味噌 にする分が減ってしまったくらいでした。これは、 前日に大豆を1キロずつはかっているところです。 子どもたちは大豆に愛着がありますから、他の学習 にも応用しようということで、算数の重さの単位を習 うところにつなげて勉強しました。

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写真このあと、大豆を家庭科室で洗って浸水します。そして、宮坂醸造の杉浦さんに味噌造りの紙芝居と大豆クイズをやってもらいました。子どもたちの笑顔が 違いましたね。3年生なんですが、見ているとメモ を取ることを本当によくやります。畑にもメモを持っ ていきます。杉浦さん(宮坂醸造)の話を聞きなが らも熱心にメモをとっていました。私は手が震える 癖があるんですが「山崎さんなんで手が震えてるの」 と聞くので「酒が切れてるからだよ」と冗談で答え たら、それもきちんとメモしていました(笑)

写真体育館で味噌玉を作っているところです。保護者が、半数くらい、たくさんお手伝いに来て下さって本当に助かりました。おかげで私は鍋洗いに専念できました。このように3キロの味噌ができて、みんな樽を抱えて通学路を帰りました。これは2年生の授業 です。

2年生は例年鉢で大豆を育てているのですが、それ がうまくいかないと言うことで、私が白衣を着て「ニ セ博士」になり、大豆について授業を行いました。 カメムシなどの害虫など、大豆に興味を持ってもら えるような話をしてみました。

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写真来年、3年生になったら、畑で大豆に取り組んで もらいたいと思っていますが、学校の先生は担任 を持っていると朝から夕方4時くらいまで連絡も 取れませんし忙しい。いかに継続できるかという ことは、やはり子どもたちにかかっていると思い ます。来年、どんな先生になるかわかりませんが、 子どもたちから声が出れば、かならず応えて下さ ると思います。そのために、現2年生に楽しみな がら大豆についてお話をして、興味を持ってもらいたい。そうやって、今年度の活動を締めくくりました。

写真3年生は99人からスタートして100名 になり、最後は101名。100粒運動にちょうどいいな、と思って。3学期に転校してきた子供は大豆の活動に接して、びっくりでしたね。1年間、微力ながら私もお手伝いを してきましたが、やはり地域の力は大切だということが身にしみました。みなさんの熱意です。

3年生担任 西野先生…

会長の話にもありましたが、中野小学校に 4月に赴任してきました。総合的な学習に中野小は何をやるのか。3年生のテーマは「津久井」です。去年は、今までは、ということでだいたい前年にならって進めるのですが、今年は子どもたちから大豆をやりたいという声があがりました。あまり子どもたちから何かやりたいと自発的に声が挙がることはありません。教師から、何かねらいを持って提案する多く、2年生ですでに鉢での大豆栽培をやっているのに、また大豆をやりたいという子が多い。2回同じ方法を繰り返してもしょうがないの、いろいろ模索する中で、石井さんに相談してみました。当初、畑での栽培は考えていなかったのですが、たくさんの収穫を目指すにはやはり畑でないと難しいということで、畑探しがはじまりました。私も赴任したばかりで何もわかりませんし、会長さんに相談すると、すぐに土地を見つけてきてくれました。下見をして、子どもたちが歩いて行くことが出来て、100人近い子どもたちが活動できるという条件を備えていたので、あとは会長さんのおかげでどんどん進めることができました。

ご覧いただいたように、種まきの予定日は雨でした。ぎりぎりまで、決行するか迷いましたが、子どもたちは雨の中でも、時期を逃したら収穫がのぞめないと言うことで、がんばってタオルをかけて種まきをしました。翌日、風邪をひいて欠席する子が多かったらどうしよう、とドキドキしたんですが。もちろん子どもたちは元気に風邪もひきませんでしたが、感想を聞くと、「大変だったけど楽しかった」と。往復も距離がありますし、盛夏の作業はきつく、体も汚れて大変です。それでも成長を実感して、収穫に至る喜びにまさるものはないようです。畑では、いつも石井さんが笑顔で待っていてくれますし、農機具にふれることも子どもたちには楽しみだったようです。

写真味噌造りや農作業は、3クラスいっしょにやりますが、それ以外の「総合的な学習の時間」は各クラスでそれぞれのアプローチをしています。私のクラスでは根粒菌とか科学的な面から大豆ってどんなものか、という学習をしています。他のクラスでは、模造紙に自分たちの選んだ写真を貼って、感想などを書き 込んで作品にしています。「こんなにとれたよ」「楽し かった」と笑顔がたくさんの作品になっています。土地を貸して下さった方にお礼のお便りを書いたり、最終的には、会長さんなどをお招きして感謝を伝えたい と考えています。

1年を通して、すべての学習がつながっている、大豆を中心にして3年生全体で活動でき たというのが、私も初めての体験で本当によかったと思います。地域の方の力なくしては出来なかったことで、本当に感謝しています。

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